販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

ハルヴィン・ジョーンズ

路上で寝るのは危ないから、夜道を歩く
「一生懸命に働けば、道が開かれると信じて」

ハルヴィン・ジョーンズ

デンバー市の人々が眠りにつく頃になると、ハルヴィンは夜道を歩き始める。住宅バウチャー(家賃補助金の受給資格)が失効してからというもの、彼は不安定な路上生活を余儀なくされている。
「昼間にバス停や道端で数時間、なんとか仮眠を取っているけれど、心身はいつも極限状態。以前、夜中に路上で寝ていたら強盗に遭って、下着以外、身ぐるみ剝がされたことがあったんだ……それ以来、夜に目を閉じると何か危ないことが起こりそうで、つい警戒してしまう。だから、気分を紛らわせるために歩くんだよ」
 アパートを失って以来、ハルヴィンの暮らしは悪循環の一途をたどった。ソーシャルワーカーの助けを借りて、家賃補助の申請書類を何度もチェックして完成させたにもかかわらず、役所で「不備がある」とにべもなく拒否された。発達障害を抱える彼は社会保障給付金を受け取っているが、あらゆる書類手続きが難しい。「小さい頃から特別支援教育を受けてきて、何の資格ももっていないんだ。でも、あきらめない。何度でもやってみるよ」
 シェルターでの暮らしも容易ではない。ハルヴィンは、より良い販売場所を探し求めて『デンバー・ボイス』の雑誌の束を携えて街を練り歩く。だがシェルターには門限があり、思う時間帯に雑誌販売の仕事ができない。何より、その日の寝床を求めて半日かけて列に並んだところで、場所を確保できる保証もない。
「シェルター内は決して清潔ではないからね。おかげで何回も病気にかかったし、入居者同士のけんかも日常茶飯事で、路上より安心だとは思えなかった」
 彼にとって路上生活の一番のつらさは、夜を過ごすための方法を考え、神経をすり減らすことだという。一晩中、危険の及ばない場所を探すか、夜通し起きていられるように体力を温存するかだ。疲労が極限に達すると、ハルヴィンはアルコールの力に頼って眠りにつく。心休まる家や医療へのアクセスがない彼には、唯一の慰めがアルコールだ。
 恐怖に突き動かされて歩けば、おのずとお腹が減り、今度は食べ物を探さなければいけなくなる。「1週間を生き抜くだけで、1年分も老ける気がする」と彼は本音をこぼす。
 お金がある時は、たまにモーテルで泊まることもあるが、市内では彼が入れるようなモーテルも年々減っている。それでも毎日、ハルヴィンは路上に立ち、雑誌を販売し続ける。
「やめるつもりはないよ。ただ、やり続けるんだ。一生懸命に働けば、いつかは道が開かれると信じて」

Text: Giles Clasen, Denver VOICE/INSP/編集部
Photo: Giles Clasen

『Denver VOICE』
1冊の値段/2ドル(そのうちの1ドル50セントが販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/コロラド州デンバー

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

今月の人一覧