販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
オーストリア『アプロポ』販売者 イグボアヌゴ・アニチュク
思わぬ縁でたどり着いた湖畔の町
いつか妻子を呼び寄せるため、仕事に精を出す

ナイジェリア南部の小さな村からはるばる渡欧し、ようやくザルツブルクの地を踏んだイグボアヌゴ・アニチュクは、ある日150番のバスに乗った。観光客にとっては、かつての王侯貴族ゆかりの避暑地バート・イシュルを訪れるルートだが、彼が向かおうとしたのはカトリック系の社会支援団体「カリタス」が運営する緊急シェルターだ。
ところが、バスの運転手がうっかりして目的地で降ろすのを忘れてしまい、イグボアヌゴは終点の町ザンクト・ギルゲンまで乗り過ごすはめに……。そこでは、まさに観光用のポストカードでよく見られるヴォルフガング湖畔の牧歌的な景色が広がっていた。
どこか落ち着ける場所はないかと思案した彼は、再びバスに乗って町境まで戻り、そこで見つけたスーパーマーケットに入店。店のオーナーに自分が『アプロポ』の販売者だと伝えると、店先で雑誌を売らせてもらえることになった。当時の体験を、イグボアヌゴはこう振り返る。...

『Apropos』
1冊の値段/3ユーロ(そのうちの半分が販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/ザルツブルク
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

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