販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

『ビッグイシュー・オーストラリア』販売者  アンドリュー

「きみには選択する力がある。信じようと信じまいと」
この言葉を心に刻むことで、世界が開けていった

『ビッグイシュー・オーストラリア』販売者  アンドリュー

オーストラリアのニューサウスウェールズ州で『ビッグイシュー・オーストラリア』誌を販売しているアンドリューが、若き日の自分に宛てて手紙を書いた。


 まだ若いアンドリューへ
 
 きみはもう少しすると視力を失い、眼の検査の一番上にある文字すら見えなくなるだろう。ある人はきみの生きざまから勇気をもらい、またある人は「左目はまだ少し見えているのに白杖を使うのはおかしいんじゃないか」と言うだろう。でも言っておこう、白杖の使い方は覚えておいたほうがいい。街頭で物にぶつかる恥ずかしさを経験せずに済むから。上を向いて、まっすぐ歩くんだ。
 ダンスも習ったらいいね。今はまだダンスに恐怖を覚えている年頃かもしれないけど、きみは大人になると、ダンスが得意になるんだよ。ドレスアップして、人々と交流する。特に古風なダンスがおすすめだ。
 人生経験があまりないことで心痛めることもあるかもしれない。母さんが大変な時に困らせてはいけないよ。父さんはよく働いてくれた。大きくなると、本当の親かと思えるくらいよくしてくれる人にも出会える。
 きょうだいの中で一番上のきみが、まず家を出ることになるだろう。弟たちにもやさしくするんだよ。「憐れみ」と「共感」の違いも早いうちに学んだ方がいい。人生経験はボランティアをすることからも得られるよ。その経験から、ゲームでは学べないことが学べるだろう。
 数年間は奇妙な人だと周りから思われることもあるかもしれない。それは統合失調症と診断されることにも由来している。
 夢見てきた女性に出会えたなら、彼女にプロポーズしなさい。いつも誠実に接することを、彼女に印象づけるんだ。人を深く愛することで、長く続く友情を手にするだろう。親戚の人たちに手紙を書くことで、コミュニケーションの技術も向上するよ。愛を行動で示すんだ。
「きみには選択する力がある。信じようと信じまいと」。この言葉を心に刻むことで、世界が開けるだろう。きみは自分が思う以上に力を持っている。でも浅はかな期待を抱いてはいけないよ。努力するのみだ。
 どんな仕事に就きたいかという目標がないことにも、苦しむことになるだろう。どんな仕事でもいい、まずやってみてはどうだろう。そうすることで、どんなことなら情熱を傾けられるのかを知ることができるだろう。政府が勧める仕事ではなく、きみがしたいことをするんだ。信念に堅く立て。『ビッグイシュー・オーストラリア』を販売する仕事はきみにとって心を満たしてくれるものであり、長いおつき合いになるだろう。

『The Big Issue Australia』
1冊の値段/9オーストラリアドル(そのうち半分が販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/シドニー、メルボルンをはじめ主要都市

Text: Andrew, The Big Issue Australia
Photo: Simone De Peak

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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