販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
スウェーデン『ファクトゥム』販売者 トーマス・オーヴィエブラット
お客さんは、愛情いっぱいに接してくれる。
まるで祖父母の家に帰ってきたみたいだよ
「最初にお酒を飲んだのは、7歳の時だね」とトーマス・オーヴィエブラット(66歳)は語る。「妹は4歳だった。大みそか、父が僕たちのグラスに注いだんだよ。とてもおいしそうに見えたんだよね」
まず自分のグラスを、次いで妹のを飲み干した。その後も、クリスマス、新年、イースター、夏休みと行事のたびにこの習慣は続いた。
「父はアルコール依存症でね。10歳の時に、母は家を出て行った。まだ子どもで事態を理解できず、『父はとっても優しいのに、母はとても意地悪だ』と感じていたから、僕は父と家に残ることにした」
庭つきの家でも家賃は安かったはずだが、父が収入のすべてを酒に注ぎ込むため、家賃を支払う余裕もなかった。
「当時一番安全と思えたのは、僕らの家から2kmほど離れたところに住んでいた祖父母の家だね。そこで食事をし、多くの愛情を得た。イチゴが植わっていてね。いくつかつまみ食いをすると僕の口の周りが真っ赤に...
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE
469 号(2023/12/15発売)
特集行ってみたい、あの町この町
スペシャルインタビュー:スペシャル企画:『からすのパンやさん』50周年
リレーインタビュー:中田裕二さん