販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

『ビッグイシュー・オーストラリア』販売者 リン

親友と呼べるようなお得意さんもできた
詩集を出版、絵を描いてオンラインで販売も

『ビッグイシュー・オーストラリア』販売者 リン

私はシドニー生まれ。8歳の時にクイーンズランドに、11歳の時にはニューキャッスルに移り住みました。今もこの街でビッグイシューの販売をしています。
 兄弟はオーストラリア西部に住んでいますが、もう連絡を取っていませんね。親の違うきょうだいも何人かいますが、もはや誰とも話をしていません。私は連絡を取りたいのですが……いろいろと複雑なんです。
 幼い頃はよくクラスメートにからかわれていたので、学校は好きではありませんでした。だけど、父や祖母のいる家から逃れられるという意味では、学校に行くことで助かっていた面もあります。そんな中で、高校も卒業したんですよ。両親からは「職が見つからないのなら学校に行きなさい」って言われていたのですが、当時はどうやって仕事を見つけたらいいのか見当もつきませんでした。今思えばうつ病ともいえる状態でしたが、それすらもよくわかっていませんでした。つらい時期でしたね。
 高校卒業後、息子を授かりました。その後、出会った男性との間にも子どもができて、2人の息子たちを育てていたのですが、ほどなくして夫は家を出て行きました。
 ビッグイシューとのつき合いはもう3年。今、真剣に販売をして半年になります。販売で得た収入で、ホームレス状態の男性が廃品探しで近くにやってきた時にはランチをおごることもあります。販売仲間であるアンドリューとは、よく夕飯をごちそうしあったりしていますね。この仕事によって私自身が助けられているだけでなく、私も周りの人を助けることができているんです。
 雑誌を買わない時にも、おしゃべりをしにきてくれるお得意さんもできました。ある一人のお客さんは今では親友とも呼べる存在で、病気の時には夕飯を作って持ってきてくれたりもして、とっても優しいんです。2人のお子さんとともに買いに来てくださる紳士もいますし、年配のご夫婦でいつも「元気?」って立ち寄ってくださる方も……。
 実は、私は詩人なんです。5、6年ほど前から詩を書きためて、詩集を出版したりもしました。それに、アーティストでもあるんですよ。アクリル画を描いてオンラインで販売したりもしています。2012年、精神的に弱っていた時期があって、それ以来絵を描いていて、一種のセラピーといったところでしょうか。当時は家から出るのもつらかったけれど、今では外に出てビッグイシューを販売することができるんですから、だいぶ良くなったと思います。
 この仕事で気に入っているところは、人と交流を持つことができることと、よく歩くのでダイエットにもなること。それに、働いていると暇を持て余すということがなくて、毎日電話をして息子たちを困らせることもないですしね。

Text:Anastasia Safioleas, The Big Issue Australia 

シドニーの近隣都市、ニューキャッスルのショッピングストリートとスーパーの前で販売するリン
Photo: Simone De Peak

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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