販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

オーストリア・ザルツブルク『アプロポ』販売者 イオン・フィレスク

出稼ぎと路上生活は子どもたちのため。 2つの世界をつなぐ、スマホの写真

オーストリア・ザルツブルク『アプロポ』販売者 イオン・フィレスク

「幼少期に嗅いだ香りで覚えているものはありますか」と尋ねると、イオン・フィレスクは間を置かずこう答えた。「田舎育ちだからよく祖父と畑で過ごしたんだけど、新鮮な干し草の香りや強い夏の日差しを思い出すよ」
 ルーマニア南部のワラキアで育ったフィレスク。ワラキアは、現在ルノーの傘下にある自動車メーカー・ダチア社の生産拠点ピテシュから25㎞ほどのところに位置するが、いたるところで貧困が影を落とす地域でもある。
 好奇心旺盛だった彼は大学に進学したかったが、他の多くの級友と同様、経済的な理由からあきらめざるをえなかった。「地元では優秀な成績を収めていたんだけどね、それだけでは輝かしい未来に手が届かなかった」。そうしてフィレスクは、生活のため建設業界で働き始め、時には闇取引にも手を出し、最後にはオーストリア・ザルツブルクにたどり着いた。
 その時以来、2つの世界を生きるようになった。一つは故郷。新鮮な...

続きは、本誌をご覧ください

Text:Matthias Gruber, Apropos/INSP

Photo: Andreas Brandl


『Apropos』 
1冊の値段/3ユーロ
(そのうちの半分が販売者の収入に) 
発行頻度/月刊  
販売場所/ザルツブルク

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

今月の人一覧