販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
セルビア『リツェウリツェ』販売者 アンドレヤ・ムラデノビッチ
社交的ではなかったが、雑誌販売で変わった
内戦、がん、妹の死を乗り越え、「好奇心が僕を前進させる」

セルビアで初めて路上生活に陥った時、身の振り方を考えるのに苦労したとアンドレヤ・ムラデノビッチは語る。もともと国をあてにはしていなかったが、どの機関も助けの手を差し伸べてくれなかったのには驚いたという。「どの戸を叩いても扉は開かれず、ただ『自分でなんとかしてくれ』と繰り返すばかり。でも、無一文でどうやってなんとかすればいいんだい?」
同国のストリート誌『リツェウリツェ』を知ったのは、そんな時のことだった。同誌の販売に携わることで、簡易宿泊所に泊まるためのお金を稼ぐことができた。当初はそれほど販売に積極的ではなかったが、販売場所に立つほど売り上げも伸びることを知ってからは、より真剣に仕事と向き合うようになった。
「昔はまったく社交的じゃなかったけど、この仕事を始めてからはいろんな人と話ができるようになった。うれしいことだね。今は依存症を治すために精神科医のもとに通ってもいるけど、依存症から...

Text:Milica Terzić, Liceulice/INSP
(キャプション)
今は固定した販売場所を持たず、「歩きながら販売するほうが好き」と語るムラデノビッチ
Photos: Sara Ristić
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

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