販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

『ビッグイシュー英国版』販売者 イーストン・クリスチャン

今までで一番のほめ言葉 「あなたが持っていると、ビッグイシューがかっこよく見える」

『ビッグイシュー英国版』販売者 イーストン・クリスチャン

私は2008年からこの雑誌を販売していますが、コロナの都市封鎖が解除されて販売を再開したら、まるで振り出しに戻ったような気持ちになりました。
お客さんの大半はいまだに家で仕事をしているので、ロンドンへの通勤を再開していません。ですから、ぽつぽつとお客さんが来てくださるのは本当にありがたいですが、販売者になりたての頃よりも売り上げは落ち込んでいるんです。だから今では、新規開拓を志し、新しい売り場にも意欲的に出かけています。
このコロナ禍の期間、私は多くの人と同じように日夜ニュースに目を通し、事態の進展を見守ってきました。感じるのは、今も人々は政府を信じておらず、事態がコントロールされているようには到底見えないということです。だからみんな、家に閉じこもる生活を続けざるをえません。それが私の売り上げに影響しているのですが、私はみなさんを非難しているわけではないのです。政府が守ってくれないなら、自分で自分を守るしかありません。
幸いにも私は12年に(ロンドン北東部の区)ハックニーのアパートに入居することができましたので、都市封鎖中は家にいられました。普段は週末以外販売場所で働きっぱなしでしたから、最初は快適でしたよ。ですが、そこから4ヵ月もそんな生活が続くとは思ってもみませんでした。
ビッグイシューの助けもあって、私はいま金銭的にとても困っているという状況ではありません。当座の食料や現金を支給してくれただけでなく、年金も手配してくれたのです。
ビッグイシューで営業とアウトリーチを担当しているジェリは、パソコンの扱いに困った時などにいつも助けてくれます。年金は19年から受給資格があったみたいなのですが、受給せずに置いておけば、後々もらう時に金額が増えると思い、わざと申請していなかったんです。でも都市封鎖で収入がなくなった時、ジェリが申請するのを手伝ってくれました。
私の暮らしにとって欠かせないのが、教会に行くことです。ハックニーのフランプトン・パーク・バブテスト教会に通っていたんですが、このパンデミックによって今も閉じられたままです。礼拝はなくなりましたが、教会のメンバー数人とは連絡を取り合っています。大事なのは建物じゃなくて、その中にある心ですから。以前からの趣味の、音楽を演奏することもまだ続けています。
そういえば、最近販売場所でこんなことがありました。ある女性が写真を撮らせてって言うんです。「どうして?」って聞くと、「あなたが持っていると、ビッグイシューがかっこよく見えるから」って。今までで一番のほめ言葉でしたね。

Text:Liam Geraghty, The Big Issue UK
* この記事は8月上旬に取材されたものです
(写真キャプション&クレジット) フェイスシールドを着けて販売するイーストン・クリスチャン(66歳)
Photo: Louise Haywood-Schiefer
『ビッグイシュー英国版』
1冊の値段/3ポンド(そのうち1.75ポンドが販売者の収入に)
発行頻度/週刊
販売場所/北アイルランドを除く英国各都市

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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