販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
Kさん
売れた時の、得体のしれない感動。社会貢献できる飲食店をするのが秘かな夢

60代の元料理人Kさんが、路上に出ることになったのは5年前のことだ。アパートで独りで暮らす94歳の母を見かねて、板前を辞め、家に戻ったのがすべての始まりだった。だんだん歩けなくなる母を介護して支えるも、病院に入ると、母はわずか3ヵ月で帰らぬ人に。かつては高級料理店を切り盛りする逞しい人だったが、バブル後の不況で借金を重ね、家をとられ、最後は生活保護を受けながらのあっけない死だった。
介護が終わると、今度はKさんの生活が困窮。ネットカフェに泊まりながら日雇いの仕事もしたが、ついには一晩の宿泊代もなくなり、飲まず食わずで2日間路頭に迷っていた時、図書館で目にしたのが『路上脱出ガイド』だった。
「ビッグイシューに電話したら、ちょうどスタッフが不在の日で明日来てくださいって言われてね。もう一晩か……って(笑)。でも働いたらお金になるって書いてあったし、路上に立つことにも抵抗はなかった。ただ、こんな...

(販売場所)
JR高槻駅南口デッキ南側エスカレーター下にて
(写真クレジット)
Photos : 木下良洋
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

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