販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
米国・ポートランド 『ストリート・ルーツ』販売者 ジェイソン・シアー
凍傷で指を失うも「愚痴は言わない」 双極性障害の治療、恋人との同棲で安定した日々を送れるようになった

重たい荷物を地下に運ぶ、床が汚れたらモップをかける――。『ストリート・ルーツ』の事務所でやるべきことがあれば、誰よりも先に動くのは販売者のジェイソン・シアーだ。「ここで働き始めた頃は朝早くに事務所に来て、受付の雑用をやっていました」と彼は言う。「事務所をきれいにしておくと、訪れる人たちが歓迎されていると感じられる。僕にとってはそれが大切なのです」
シアーが『ストリート・ルーツ』の販売者となって8年。「おかげで安定した日々を送れています。この仕事をしていなかったら、もっと行き当たりばったりの暮らしをしていたと思います」。販売者になった当時は路上暮らしだった。数年前の冬には凍傷を負い、指1本と他数本の指先を失っている。
「雨と雪が降る日でした。毛布も十分に持っておらず、いた場所もよくなかったのです」と、シアーは当時を思い出しながら語る。「指先が黒ずんできて、翌朝、事務所で手を洗いました。汚れだ...

(Helen Hill, Street Roots / INSP)
『ストリート・ルーツ(Street Roots)』
●1冊の値段/1ドル(そのうち75セントが販売者の収入に)
●発行回数/毎週
●販売場所/オレゴン州ポートランド
(サブ写真キャプション&クレジット)
数年に一度は雪が積もるポートランド ©Shutterstock.com
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
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