販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

米国『ストリート・ルーツ』販売者 ウォーリー&チョーンシー

職業訓練校で出会った二人、「一対の靴下」のよう。 いつも一緒に働き、お笑いコンビも組む

米国『ストリート・ルーツ』販売者 ウォーリー&チョーンシー

もしあなたがオレゴン州ポートランドの街角で、幸運にもウォーリー・モアランドとチョーンシー・トライスに会うことができたら、ご褒美をもらったと思っていい。できれば彼らとしばし話をしてみてほしい。彼らの優しさや寛容さ、そして二人の心持ちに心を打たれ、楽しい時間を過ごせることを保証する。
チームを組んで『ストリート・ルーツ』を販売する二人は、通り過ぎるみんなから評判がいい。二人が何より大事にしているのは、地域の絆を育む接客を行うことだ。「僕たちはお互いにとって必要な存在なんだ」と彼らは言う。
二人でお笑いコンビも組んでいて、ノースウェスト・ショーケース、ハーヴィーズ・オープン・マイク、ザ・ボイラー・ルームなど、市内のいくつかのシアターで彼らのライブを見ることができる。
また二人は週に3回、「ウィー・ライズⅡ」というチャリティ団体でのボランティア活動に加わり、グレイハウンド駅でホームレスの人々に無料のランチを配っている。ウォーリーはこの団体の会計係を務め、チョーンシーは現在この活動を伝えるドキュメンタリー映画の制作に取り組んでいる。
チョーンシーは映画監督、写真家、詩人という顔をもち、武道の愛好家でもある。またYouTube用の動画も制作しており、たとえば生活に困っている人たちに向けて、限られた予算で健康的な食事を作るための料理レシピなどを紹介している。彼は自分のことを、責任を持って目標を達成するのが好きなタイプだと評し、しかしそうは言っても、もし友人のウォーリーがいなかったら、今日、自分は生きていなかったとすぐに付け加えた。
一方、ウォーリーがポートランドに来たのは、05年に故郷ミシシッピ州ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナがきっかけだった。勤勉な両親のもとで育ち、沖合の石油掘削にかかわる仕事を渡り歩き、成功を収めてきた。だがハリケーンは地域のコミュニティや文化を破壊し、安定した職業も奪っていったと彼は話す。彼の両親は危機一髪のところで命が助かったものの、避難先の「スーパードーム」で過ごした6日間は、混沌そのものだった。一時は2万人もの避難者があふれたその状況は、メディアが報道するより「10倍もひどかった」と言う。そんな体験をしてしまったら、もう元の生活には戻れなかった。テキサス行きのバスに乗ったものの、どこに行く当てもなく、最終的にこの街にたどり着いた。
そしてウォーリーとチョーンシーは、ポートランドにある米国都市住宅及び経済地域開発公社の職業訓練学校で出会った。二人は知り合ってすぐに基本的な価値観が同じで、同じことを求めていることに気づいた。新たな人生のスタート、住宅、そして安定した職業だ。二人は実用的な大工の技術を習得し、現場で働けるようになることを目指しているが、在学中の今は、『ストリート・ルーツ』の売り上げが収入の60%を占める。現在ウォーリーはトランジショナル・ハウス(※)に住んでいるが、チョーンシーは今もホームレスだ。
いつもチームとして働く二人は、自分たちのことを「一対の靴下」のようだと言う。チョーンシーのほうが内気、ウォーリーはおしゃべりなタイプで、お客さんたちは自然とどちらかの性格に引かれていくようだ。そして彼らはこのストリート紙の魅力を、読みごたえのある素晴らしい内容と個々の人間関係を通じて地域のつながりを強められるところにあると考えている。
何より大事なのは人なんだ、と二人は言う。そして本当に彼らと数分話した後は、自分が人類というより大きな家族の一員になったように感じられるのだ。

※ ホームレス状態から恒久住宅に入居できるまでのあいだ、一時的に入居する住居のこと。「ステップハウス」ともいう。

(Helen Hill/Street Roots / INSP.ngo)

Photo: Street Roots

『ストリート・ルーツ』 
●1札の値段/1ドル(約110円)。そのうち75セントが販売者の収入に。
●販売回数/月2回刊
●販売場所/オレゴン州ポートランド

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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