今月の人

米国『リアル・チェンジ』販売者、マイケル・ジョンソン

失敗だらけの人生だったけれど、「意志があるところに道は開ける」と言いますから、あきらめませんよ

米国『リアル・チェンジ』販売者、マイケル・ジョンソン

古くから貿易港、軍港として栄えた米国・ワシントン州、シアトル。現在では、ボーイングをはじめ、マイクロソフト、アマゾン、スターバックスなどの誕生の地としても知られる。
この地で販売されているストリート・ペーパーは『リアル・チェンジ』と呼ばれ、コミュニティで親しまれている。
『リアル・チェンジ』販売者のマイケル・ジョンソンは、この30年間、ホームレス状態になったり住まいを得たりという生活を繰り返してきた。
「私は罪を犯して精神科の病院へ送られ、そこで更生プログラムを終えました。すごく遠くまで行って、さまよっていたような日々……地獄のような人生でした……でも、もうあの時の私ではありません。神に感謝しています。こうして、この世界に戻ってこられたのですから」
マイケルの先祖には、ルイジアナ州のクレオールやブラックフット族インディアンだった祖母がいる。彼は、ワシントン州にある小さな街、ブレマートンで育ち、父はベトナム退役軍人だった。
子ども時代に虐待された影響で、薬物とアルコール漬けの人生を送り、結局精神を病んで塀の中に行き着いたという。
「騒ぎを起こすまでは軍隊に入るつもりでした。陸軍に入った後、警官になるつもりだったんです。でも、騒ぎが私の経歴を台無しにした……」
一度は人生をあきらめかけたが、『リアル・チェンジ』と出合い、マイケルは再起を志す。現在は、シアトル中心部のショッピングモール「ウエストレイク・センター」で販売している。
「このストリート・ペーパーが、人生において、真の励みとなっていますね。ここに来ると、販売支援スタッフが親切にいろいろと説明してくれます。彼らの前向きな雰囲気が、いい影響を与えてくれています」
ストリートでほかの販売者を見かけると、仲間意識を感じるというマイケル。販売者同士、互いに気を配り合っているため、彼は今や自分が販売者コミュニティの一員だと深く感じるようになったという。
マイケルは、ホームレスという存在についてよく考える。「多くの人がホームレスを嫌いますが、私はそれと闘いたいんです。だって僕らは、ただ家がないだけで、人間なんですから。たとえば、ホームレス状態の人たちのために『理想の家』があってもいいのでは、なんて夢見るんです。1ヵ月間そこに滞在が許され、力を蓄え、その間に何かに挑戦するための拠点になるような、そんな場所があればいいなってね」
『リアル・チェンジ』の販売を始めてから、彼にはやってみたいことが増えた。「たとえば、旅をする、記事を書く、薬物やアルコール依存症についての理解を深めてもらう……といったことをやってみたいですね」
いつか、大学へも行きたいという。マイケルは読み書き障害があるので、困難を伴うだろうが、挑戦してみたいのだという。「読むことはできますが、言葉が入れ替わっているように見えるんです。テストにパスできないので、学校に入ることは難しいかもしれません。でも『意志があるところに道は開ける』と言いますから、あきらめませんよ」
本を書くことという夢もある。自叙伝を書いて、薬物とアルコール依存について、多くの人に知ってもらいたいのだ。
「とにかく、何かを始めたい、という気持ちです。学び続けなければ、と思っているんです。これまでで一番、人生に対して意欲的になっています。今まで、失敗だらけの人生だったけれど、今回はうまくいくんじゃないかって思っているんです。多くの人の助けを借りてここまで戻ってこられた。だから僕はこれから、恵まれない人々とともに働きたい。その中で、他の人たちとともに助け合って生きていきたい。そのために、やるべきことをやっていくだけです」

『リアル・チェンジ』
1冊の値段/2ドル(約200円)で、そのうち1ドル40セントが販売者さんの収入に。
販売回数/週刊
発行部数/約2万7千部
販売場所/シアトル

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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