販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

青木一男さん

踏まれるたびに強くなる、 そんな雑草魂でがんばっています

青木一男さん

「大変なことも多いですけど、新しい仕事にも少しずつ慣れてきたところです」。そう話してくれるのは、昨年8月にビッグイシューの販売者を卒業した青木一男さん(43歳)。

現在、大阪市生野区にある知的障害者が通う共同作業所で、フルタイムのスタッフとして働いている。青木さんの仕事は、作業所で働くメンバーたちをサポートすること。100円均一ショップに卸す商品の仕上げ作業や、粗品用のタオルを折り畳んだりするのを補助するほか、買い物や訓練などの外出時の付き添いもしている。

「最初の1ヵ月ぐらいは、意思の疎通がうまくできなくて精神的にかなり参りましたね。でも、日々接する中でコミュニケーションのコツのようなものが、ちょっとずつわかってきたような気がします。毎日いろんなことが起こる職場ですが、同僚のみなさんは仕事を親切に教えてくださるし、通所メンバーたちも本当に愉快な愛すべき仲間たちです」

働き始めた当初は通所メンバーになかなか名前を覚えてもらえなかったが、ダウン症のY君だけが出勤初日から青木さんの名前を覚えて呼んでくれたという。それがきっかけで、Y君とは特に仲よくなったそうだ。

「アニメの『ドラゴンボール』が好きという共通点があって、何だか気が合うんです(笑)。毎月、作業所では誕生会を開いているんですが、Y君の誕生会の時に『ドラゴンボール』のカードをプレゼントしたら、とても喜んでくれて……。他のスタッフがY君に付き添ってバスに乗った時に、バスの中でそのカードをずっとうれしそうに手に持っていてくれたそうなんです。その話を聞いて、僕も心がジーンと熱くなりましたね」

青木さんは就職が決まってから、仕事場から自転車で10分ほどのところにアパートを借りた。今、平日は9時から17時まで働き、週末にはヘルパーの資格を取得するために講習に通っているそうだ。

「2月にはヘルパー2級の資格を取れる予定です。仕事から帰ると、家でもよくテキストを開いて勉強しているからか、この前受けたテストでは200点満点中182点だったんですよ。先生からも『すごいね』と褒めてもらえました。順位付けがされるわけではないんだけど、自分の気持ちの中では『首席で修了するぞ』というぐらいの意気込みで、最後までしっかり勉強したいと思っています。介護の場面だけでなく、日常生活でも役立つことがいっぱいだしね」

資格が取れれば、新たな道も開けてくる。収入を安定させて、近い将来には一部受けている生活保護からも完全に卒業したい、仕事で得た収入だけで生活を成り立たせたい、青木さんはそんな思いももっている。

「今の仕事に就けたことは、本当にありがたいめぐり合わせです。実際にヘルパーとして働いて約半年が経ちましたが、自分に向いているかなと感じられるので、ずっと続けていきたいと考えています。そのためにも、まずはヘルパー2級に合格して、そしていつかは介護福祉士の資格にも挑戦できれば」

毎月1日と15日になると、販売者魂がうずくという青木さん。
「実際に買いに行ったりもしていますよ。おおげさに聞こえるかもしれないけれど、ビッグイシューは僕の青春でしたね。多くの方との出会いがあって、元気をもらえて、本当に楽しかったなぁ」

仕事でつらいことがあった時、お客さんが言ってくれた「暑い時期でも屋外でがんばっていたじゃない。青木さんなら新しい仕事もきっと大丈夫」という言葉を思い浮かべるのだという。

「お客さんからの励ましの言葉に支えられて、今までやってこられた気がします。本当は直接お顔を見てお礼を言いたいんですけど、それも難しいので、誌面を通じて感謝の気持ちを伝えさせてください。本当にありがとうございました。これから先もまだまだ山あり谷ありだろうけれど、踏まれるたびに強くなる、そんな雑草魂で前を向いて歩いていきます」

取材が終わると、「今日は作業所のメンバーが参加する地域のイベントがあるんです。今から僕もお手伝いに行ってきますね」。そう言って自転車にまたがった青木さんの表情は、とても生き生きとしていた。

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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