販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
『ファクトゥム』販売者 ラッセ・アンデション
人と会えば楽しくて、孤立を感じない“雑誌販売”
アルコール依存症から離れられ、収入も得られる
ラッセ・アンデションは、スウェーデン第二の都市ヨーテボリにあるアパートで40年ほど暮らしている。雑誌販売を終えて帰宅した彼はドアを開け、リビングルームの天井に空いた大きな穴を見上げながら話してくれた。「これは引っ越した当初からあった穴なんだ。なぜ空いたのかはわからないんだけど」
ラッセは自宅を安く手放し、前の家主と部屋を交換するようにこの住まいを手に入れた。当初は「してやられた」と思ったものの、今は後悔していない。「相手は引っ越しすることで『職場に近くなる』と喜んでいたしね」
リビングの真ん中に置かれたベッドの上には、前の家主の持ち物とおぼしきピンクのレースがあしらわれた枕に、青い花柄のかけ布団。そして枕元には、ラッセの息子が写った学校の集合写真が飾られていた。
政治や経済の話題が好きなラッセは、いつもベッド横のテレビでニュースを観ているという。「歌のコンテストはあまり好きじゃない。...
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE
489 号(2024/10/15発売)
特集幸せのアーバンファーミング
スペシャルインタビュー:ピーター・バラカン
リレーインタビュー:和田彩花さん