販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
オーストリア『カプファマケン』販売者 ラモナ
革命、貧困を経て、乳がんの治療中
「私は息子と娘のために、強くならなければ」

「ここのところ大変なことが続いています」と『カプファマケン』の事務所で腰かけ、お茶をかき混ぜながらラモナは語った。上手なドイツ語を話す。最近スカーフを頭に巻き始めた彼女は「治療で髪を失うと、こんなに寒く感じるのね」とはにかんだ笑みを浮かべる。
ハンガリーとの国境80 kmほどのところにあるルーマニアの町、ティミショアラ出身のラモナ。1989年に起こったルーマニア革命(※)により、当時18歳の彼女の生活は一変した。
「それ以前は食べるものと住む家は確保されていました。私たち4人のきょうだいと両親には2リットルの牛乳と大きなパンの塊が毎朝支給されることになっていたのです。両親はそれを受け取るために毎朝4時には列に並んでいました。量は多くなかったけれど、私たちには十分でした」
革命後、西側で手に入るものは何でも手に入るようになった一方、「仕事を見つけることがとても難しくなりました」というラモ...

『カプファマケン』
1冊の値段/3ユーロ(そのうち、1.5ユーロが販売者の収入に)
発行頻度/月刊(合併号あり)
販売場所/リンツ市内の路上、カフェなど
Text: Daniela Warger, Kupfermuckn/INSP/編集部
Photo: Daniela Warger
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

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スペシャルインタビュー:フジコ・ヘミング
リレーインタビュー:ジェーン・スーさん