販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
『ビッグイシュー日本版』販売者 中西仁志さん
9年近くお客さんに支えられてきた販売場所
精神的につらくても、簡単にあきらめるわけにはいかない

熊本市内のびぷれす熊日会館前で、見覚えのある赤いポロシャツが目に飛び込んできた。「こんにちは」と声をかけると、「おぉー、どうもどうも!」ととびきりの笑顔で中西仁志さん(61歳)が迎えてくれた。
中西さんが『ビッグイシュー日本版』の販売者になったのは6年半前のこと。九州でも数少ない販売者ということもあり県をまたいで買いに来てくれるお客さんもいて、当初は月400冊ほど売れていたという。「それが2016年の熊本地震で300冊近くまで落ち込んでね。最近のコロナ禍では、さらに厳しい数字になっています」
熊本での販売を支えるボランティアの人々からも、「よく精神的にへこまずにいられますね」と言われるという。「いやいや、僕だってへこみますよ。でもね、この場所は前任者が2年半、僕が6年半販売を続けてきた場所。9年近くお客さんに支えられてきたんだから、そう簡単にあきらめるわけにはいかないんですよ」
そう...

※後ろには老舗デパート、鶴屋百貨店が見える
文と写真:八鍬加容子
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
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