販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
セルビア『リツェウリツェ』販売者 ヨワンカ・オブラドヴィツェ
自分の境遇に似ていた“販売者の再起の物語” 働くために生き、生きるために働く

セルビアのストリートペーパー『リツェウリツェ』のことは、ちょうどお金に困っている時に偶然知りました。事務所に行くと1冊雑誌を手渡してくれたんですが、ある記事に目が留まりました。それはかつてホームレス状態だった人たちの再起の物語で、まるで私自身の境遇と似ていたのです。そして言ったんです。「ここで働きたい」って。1日目に10冊売れて、次の日は20冊。こうして、私の販売者としての日々は昨年の9月に始まりました。
私は今、3種類の薬を飲まないといけません。そのためのお金はいつも先に取っておきます。時に雑誌を買うお客さんが2倍の金額を払って、おつりを受け取らないことがあるのですが、そうされると胸が痛みます。というのも、私は貧しくはあるけれど、物乞いではないからです。
身の上話になりますが、セルビアのある村で生まれた私は、高校卒業後、法律を学ぶために大学に入学しました。しかし、卒業するためにはあと二つ...

Text:Milica Terzic, Liceulice/INSP
※ セルビア人とアルバニア人が対立していたコソボ自治州で、米国や欧州勢力のNATOが国連の決議を経ずに行い、市民を含めた約2000人が犠牲となった。
(写真キャプション) 販売ベストを着るヨワンカ。現在62歳、日常生活は杖を使って歩いている
(写真クレジット) Photo: Sara Ristic (雑誌情報) 『Liceulice』
1冊の値段/200セルビア・ディナール、そのうち半分が販売者の収入に
発行頻度/月刊
販売場所/ベオグラード
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

393 号(2020/10/15発売)
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