販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
スイス『サプライズ』販売者 カリン・パコッツィ
幼少期のトラウマと薬物に翻弄された日々。 今では自尊心を取り戻し、娘を誇りに思う

18歳の時、人生最良の時が始まりました。チューリッヒのギムナジウム(※)に通うことになり、たくさんの友人たちとボーイフレンドを得ました。家はチューリッヒ湖のそばにあり、学校からは遠かったため、家には寝に帰るような日々でしたね。
19歳の時に妊娠がわかり、ボーイフレンドと後に生まれるかわいい娘との生活が始まりました。ギムナジウムの卒業試験に合格し、大学でドイツ語と歴史を学び始め、すべてが順調に見えました。ですが、22歳の時に精神的に不安定になり、病院に通うようになりました。
私の子ども時代には、アルコール依存症の父からの虐待が影を落としていました。長らくその記憶を封印していたのですが、突然その記憶が呼び覚まされ、人生が崩壊したのです。夫以外、私の言うことを信じてくれる人はいませんでした。両親、姉妹、そしてかかりつけの医者までも……。疲れ果てた私は、チューリッヒにある公園まで運転し、コカインと...

Text:Georg Gindely, Surprise/INSP
※ 普通の中等教育学校と異なり、試験に合格した者のみが進学できる学校。大学進学を目的とする。
(雑誌情報) 『サプライズ(SURPRISE)』
1冊の値段/6スイスフラン(そのうち半分が販売者の収入に)
発行頻度/月2回 販売場所/バーゼル、ベルン、チューリッヒなど
(写真キャプション&クレジット) 現在52歳のカリン・パコッツィ
Photo: Bodara
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

387 号(2020/07/15発売)
特集平和を照らす
スペシャルインタビュー:少女時代 ユナ
リレーインタビュー 私の分岐点:伊藤 比呂美さん