販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

米国・ポートランド『ストリート・ルーツ』販売者 ジョニー&ステファニー

薬を断とうと二人で決めた。成長して変われるチャンスはいつでもある

米国・ポートランド『ストリート・ルーツ』販売者 ジョニー&ステファニー

昨年のクリスマスから、『ストリート・ルーツ』の販売者となったジョニーとステファニー。二人はワシントン州バンクーバーのシェルターで13年前に出会った。「お互いすぐにピンと来たんです! その日からずっと一緒にいます」とステファニーは言う。
路上で暮らすには、一人よりも二人のほうが楽だという。「お互いを守り合えるから」とジョニーが言うと、「それに寒い夜は温め合えるしね」とステファニーが続ける。だが、二人分の荷物を持ち運ぶのが大変な時もある。「私はモノを溜め込んでしまうタイプ。ホームレスだから、たくさんモノを持たなきゃいけないんです。でもそうすると不思議なことに(自分のモノに囲まれているから)、自分はなんだかホームレス状態じゃないんだって感じられる」とステファニー。警察に追い払われるのを避けるため、二人は毎晩寝場所を移している。
今は穏やかなステファニー。だが、思春期は反抗的な少女だった。オレゴン州ポートランドで育ち、子どもの頃に家を飛び出した。「悪い環境に身を置いて、路上にいる子がやるようなことをしていました」。てんかん持ちのステファニーにとって、いつ起こるかわからない発作に対処してくれるジョニーがいることは安心だという。
ジョニーはワシントン州生まれ。子どもの時、父親は長く収監されていた。「初めて会ったのは父が出所した時で、僕は15歳だった。あっちはエラぶって父親風を吹かせようとしたけど、僕は言うことをきかなかった」。ジョニーはこう続ける。「彼によると、僕の人生はもうめちゃめちゃで取り返しがつかないそうだ。でも気にしないよ、あっちが間違ってるだけだ。成長して変われるチャンスはいつでもあると思う」
二人は長年、薬物依存にも苦しんだ。「薬を断って2年経ちます。知り合いの多くは、薬物依存の時はカップルでいて、やめたら別れてしまう。でも私たちは薬物をやめるって二人で決めたんです。これからも生きのびたいなら、それしかないって。薬をやって命を落としかけていましたから」とステファニーは語る。家族に嘘をついて信頼を失ったり、窃盗をしたり……その間も二人はずっと一緒だった。「大変な時も、よいことも二人で経験してきた。私たちは二人で一人みたいなもの」
ステファニーとジョニーの間には、1歳5ヵ月から10歳の子どもが5人いる。3人はステファニーの両親が、あとの2人を兄家族が育てている。誕生日やお祝いの日にはよく子どもたちに会いに行き、プレゼントや時には路上で手に入れたものを持っていく。「一緒にいられないのはつらいけれど、この方がいいんです。私たちはまだ路上でもがいているから。子どもたちの存在には本当に感謝しています」とステファニーは話す。
いつか自分たちの住まいを持つのが二人の夢だ。他の仕事に就けるまで、今はこつこつと雑誌販売を続ける。「『ストリート・ルーツ』は自尊心を取り戻させてくれました。自分にもできることがあるんだって思うし、ホームレスだからってジャッジされることもない」とステファニー。売る時も、二人はいつも一緒だ。

(Helen Hill, Street Roots / INSP)

(写真キャプション)
ジョニー(奥)とステファニー

(写真クレジット)
Photo: Helen Hill

『ストリート・ルーツ(Street Roots)』 
●1冊の値段/1ドル(そのうち75セントが販売者の収入に)
●発行頻度/毎週
●販売場所/オレゴン州ポートランド

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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