販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
西岡稔さん
お客さんには感謝の言葉しかない。アニマルセラピーカフェを開くのが夢

誰もが黙々と先を急ぐ朝の通勤時間。立ち止まるのもはばかられる殺伐とした空気の中で、西岡稔さんはためらうことなく声を上げる。「おはようございます、おはようございます……」。無言の人波に向けて繰り返し放たれる挨拶は、どこか優しげで、まるで一人ひとりに語りかけているかのよう。時折、声につられて小さく挨拶を返す人もいるが、たいていはチラッと視線を向けるか、気にも留めずに足早に通り過ぎていく。
「特に目立った売り方をしているとは思わないんです。目の前を通る人はすべてお客さんですから。子どもの頃から人には挨拶しなさいと言われて育ったので、僕には普通のこと。無視されても、気にはならないです」
場所は大阪・梅田のど真ん中、スカイビルへと向かう地下連絡通路の入り口。今年1月末から販売者となり、この売り場に立っている。357号(4月15日発売)の投稿欄には西岡さんの販売姿に感銘を受けた読者の声も掲載されたが、...

※1 野宿を余儀なくされている人に宿泊場所とシャワーを提供する施設
※2 ビッグイシュー基金が運営する、ホームレス状態の人に低廉な利用料で提供する居室
(販売場所キャプション)
スカイビル連絡通路にて
(写真クレジット)
Photos:平手繭
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

362 号(2019/07/01発売)
特集民主主義を見捨てない――宇野重規ゲスト編集長
スペシャルインタビュー:チ・チャンウク
リレーインタビュー 私の分岐点:玉木 幸則さん