販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

歩こう会・祝!50回

一人ではここまで続けるのは無理だった。 何気なくあるものに気づく楽しみを参加者の方々と共有できたらうれしい

歩こう会・祝!50回

大阪のビッグイシュー販売者、濱田進さんが07年から
月1回ペースで続けてきた「歩こう会」が、今月50回を迎える。
スタッフ、読者、ボランティアの方々も巻き込んだ街歩き。
その醍醐味を聞いた。

蕪村通り商店街に
なにわの出世街道
隠れた名所を歩く

「知らない道を歩くのはとても楽しい。裏道で思わぬ発見があったり、意外な風景に出合ったり。知らなかった見どころが、大阪にはまだまだたくさんあるんだろうなって気がしてます」。そう話してくれるのは、ビッグイシューのクラブ活動「歩こう会」で“案内人”を務める販売者の濱田進さん。同会は07年1月にスタート。7月、8月と12月を除いて月1回のペースで開催され、この10月でなんと50回を数える。毎回約5~6キロ、1~2時間の大阪・街歩き。参加者は、販売者やスタッフ、読者、ボランティアの方などで、平均して4~7人、多い時で十数人がそぞろ歩きをともに楽しむ。
これまで歩いたコースの一覧を見せてもらうと、「大阪天満宮~天神橋筋商店街」「大阪城梅林」「天王寺七坂」といった定番から、「鵺塚~農業用水門跡~蕪村通り商店街」「福沢諭吉誕生地~なにわの出世街道~松下幸之助創業の地碑~第二工場跡」「大塩平八郎終焉の地碑~梶井基次郎碑~津波・高潮ステーション」など、大阪で暮らす人であってもあまり知らないスポットがずらりと並び、興味をそそる。もちろん、訪れるのは基本的にお金のかからない、無料の場所だけだ。
「参加者の希望を聞いたり、ガイド本や歴史の資料を参考にしたりしながら、コースを決めています。ラジオで誰かがおもしろかったと話していた場所を取り入れることもありますね」と濱田さん。あまり知られていない道や場所をできるだけ組み込むことや、休憩やトイレのことを考えてコースを構成することも、案内人としてのこだわりだ。また、訪れるスポットの由来や歴史を調べておくのはもちろんのこと、参加者が道に迷わないようにと、いつも事前に一人で下見をしに行くそうだ。
ふとした場所に、大阪の歴史がパックリと口を開けている

会の発足時から参加している國井由紀子さんは、第1回の「大阪七福神めぐり」の際に訪れた「真田の抜け穴」で知られる三光神社で見た光景が、参加し続ける一つのきっかけになったという。「神社の近くに『陸軍省』と書かれた石碑があったんですね。気になったので帰宅後に調べてみると、そこは旧真田山陸軍墓地という日本最古の陸軍墓地でした。ふとした場所に、これまで知らなかった大阪の歴史がパックリと口を開けている。歩こう会の街歩きには、生まれ育った大阪なのに、まるで知らない土地を訪れているかのようなおもしろさがあります」
とあるビルの解体予定現場に遭遇、そこは昔の銀行跡だったと聞き、「特別だよ」と中を見せてもらったこともある。此花区・西念寺の門前では、「昔、この向こうには橋が架かってたんですよ」と地図や資料にもない話を地元の人に教えてもらったこともある。路地歩きでのそんな出会いや発見が、歩こう会の大きな魅力なのだ。
もともと歩くのが好きで、30代後半から北海道から九州まで全国のウォーキングイベントに参加していた健脚の濱田さん。最長で1日50キロを歩いたこともあるという。「健康促進と親睦のために」と歩こう会を立ち上げたものの、まさか50回も続くとは思っていなかったと本人も驚く。
「一人ではここまで続けるのは無理でした。回を重ねてこられたのは、参加してくださるみなさんのおかげ。少人数ならではののんびりとした街歩きですが、だからこそ歩いている途中におもしろそうなものを見つけたらそこに時間を取ることもできますし、その場所で出会った人からお話をお聞きすることもできます。何気なくあるものに、気づくかどうか。そんな楽しみを参加者の方々と共有できたらうれしいですね」
これまでは主に大阪市内を歩いていたが、今後は市外へもその範囲を広げていけたらと夢をふくらませる。新たな参加者も大歓迎だそうだ。

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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