販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
オーストリア『アプロポ』販売者 ゲオルゲ・クラチウン
“クリスマス”という名前を授かって
「信心があるから、希望をもち、前を向いて進める」
「彼の苗字『クラチウン』は、ルーマニア語で『クリスマス』という意味なんですよ」。そう通訳者が教えてくれると、ゲオルゲも同時に穏やかな笑みを浮かべた。
57歳の彼が『アプロポ』の雑誌販売を始めてから、約1年が経つ。カトリック系の支援団体「カリタス」が運営するシェルターで夜を明かすと、早朝のバスに乗り、販売場所へ向かう。持ち場のスーパーマーケット前でお客さんを待つ。片言のドイツ語で「おはようございます」「こんにちは」と、行き交う人々に声をかけながら。
ゲオルゲは、ルーマニアの工業都市ピテシュティに生まれ、学校には4年しか通えなかった。かごの編み方や箒の作り方を両親に教わり、生計を立てていたが、工業製品が流通するようになると、やがて商売は行き詰まった。他に仕事が見つからず、知り合いを頼ってオーストリアのザルツブルクに行き着いた。
持ち場では折り畳み椅子に座りながら、いつしか人々を観察するの...
『Apropos』
1冊の値段/3ユーロ(そのうちの半分が販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/ザルツブルク
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

517 号(2025/12/15発売)
特集道草、寄り道、回り道
スペシャルインタビュー:バーニー・サンダース
リレーインタビュー:フローリスト 前田有紀


