販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
ミカエル
10代から続いた、薬物依存症との闘い
今では、雑誌販売が心のよりどころに

私はスウェーデンの港湾都市ヨーテボリに生まれ、労働者階級の家庭で育ちました。母は南部のスモーランド地方の人で、父はエストニア出身です。彼は、旧ソ連軍がフィンランド東部に侵攻した「冬戦争」(1939〜40年)で従軍した後、隣国のスウェーデンにたどり着きました。そして母と出会い、結婚したのです。
母は過保護で、父はアルコール依存症でした。晩酌はウオッカやコニャック、アルコール度の高いビール。「くそったれ!」が口癖で、何度も警察のお世話になりました。一家とは縁遠い家族でした。
父はとても怖かった。長い時間、湯船に浸けられたこともあります。クリスマスイブには、ベッドに入って父から戦争中の話を聞かされました。子どもながらにおもしろかったのですが、敵がナパーム弾(※)を小さい子に投げつけたという恐ろしい話もありました。
両親も私も、学校の成績を気にかける余裕なんかなかった。ただただ、自分に目を向...

『Faktum』
1冊の値段/100スウェーデン・クローナ(そのうちの半分が販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/ヨーテボリなど、イェータランド地方の数都市
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE

513 号(2025/10/15発売)
特集編む人たち
スペシャルインタビュー:シム・ウンギョン
リレーインタビュー:タレント 折井あゆみ