販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

スウェーデン『ファクトゥム』販売者  ダニエル・ミハイ

コロナ禍ではっきりわかった「働くことの大切さ」
将来は人々の居場所をつくる仕事がしたい

スウェーデン『ファクトゥム』販売者  ダニエル・ミハイ

36歳のダニエル・ミハイは、スウェーデンのマルメという街で『ファクトゥム』を販売している。ルーマニア出身で、今も家族の何人かはルーマニアで暮らしている。
「スウェーデンに来て販売者になったのは10年前のことです。今は兄弟の一人と小さなアパートを借りて、一緒に暮らしています」
販売の仕事は好きだが、一日中路上に立ち続けるのはきつい時がある。だから他の仕事も探しているという。
「引っ越し会社でしばらく働いたこともあって、できる仕事は何でもやってきました。でも短期の契約が終わると、みんな『ファクトゥム』に戻ってきます。いつも戻れるところがあるというのは、ありがたいことですね」
 周りの人々はみな親切だが、中にはそうでない人もいる。いつも笑顔を絶やさず、何があろうとも最善を尽くす、それしかないとダニエルは言う。
「この仕事は心身ともに強くなければ務まりません。僕の英語を聞いてみんなうまいと驚くけれど、ルーマニアでは12年も学校に行っていたし、英語もスウェーデン語も人と話しているうちに覚えました。僕は外向的だから、人と交わることの多いこの仕事をありがたく思っています。幸せそうで、身なりも気をつけているせいか『どうして販売者をしているの?』と尋ねられることもあります。そんな時は『他の仕事のオファーがあれば、喜んで引き受けますよ』と答えるようにしています」
 どんな仕事であれ、正直に働いていれば何も恥じることはない。そして、苦しい時に社会から孤立してしまうことはよくない――。そのためにも「働くことは大切なことだ」とコロナ禍ではっきりわかったとダニエルは言う。
「今は販売の仕事が終わってから、IT関連のオンライン授業を受けています。将来、IT関係の仕事に応募する時には役立つだろうと思って。インターネットさえあればどこでも働くことができるでしょうし……。僕はあちこち動き回って新しい場所を見るのが好きなんです。『ファクトゥム』も、イースタードやシェーボー、トメリラ、シムリスハムンの街で販売したりしました。それでよく知った顔に出会うことが多いんです」
 ダニエルは年に1度か2度、ルーマニアの家族のもとへ帰るようにしている。しかし、バスと飛行機代が値上がりして、それも難しくなってきた。
 お金は必要だが、日曜は時々休みを取るようにしている。英気を養うことも大切だからだ。
「僕はサイクリングやサッカーをするのが大好きなんです。もちろん、一緒にプレーする仲間がいればですが。夏には泳いだり釣りをするのもいいですね。これからも身体にいいたくさんの果物を食べて、活動的でいたい。そして将来は、人々の集まる居場所をつくる仕事がしたいんです」

『Faktum』
1冊の値段/100スウェーデン・クローナ(そのうち半分が販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/ヨーテボリなど、イェータランド県の数都市

Text: Malin Clausson, Faktum/INSP/編集部

Photo: Åsa Sjöström

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

今月の人一覧