販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
米国『ストリート・ジン』販売者 マイケル・カルフーン
30年の刑務所生活で見つけた理想の自分の姿
「与えられた命をまっとうして生きる」
当時16歳の若さで、テキサス西部の刑務所に収容されたマイケル・カルフーン。刑期は30年にも及んだ。
「まだ子どもでしたが、大人と同じ房に入れられましたね」とカルフーンは言う。「その頃はギャング組織に所属していたこともあり、入所後も暴力と隣り合わせの日々が続きました」
カルフーンは長期にわたり、独房に置かれることになった。「1日のうち23時間を一人きりで過ごすんです。残りの1時間は手錠をはめられて部屋から出て、シャワーを浴びて、また房の中に戻る」。それが19歳から27歳までの人生だった。
その間、刑務所の外ではインターネットやソーシャルメディアが急速に普及するも、携帯電話の使い方すらカルフーンは知らなかったという。出所したのは3年前のことだ。「外国に来たようなものですよ。生きのびるためには、一つひとつ覚えていかなくては」
変わったのは外の世界だけではない。家族にも変化が訪れていた。2017年に母が亡くなり、その3年後には父もこの世を去っていたのだ。父が息を引き取ったのは、仮釈放される2日前のことだった。
だが幸いにも、出所の当日に姉妹が迎えに来てくれた。従兄弟の家まで車で送り届けられたカルフーンは、現在もそこで暮らしている。
「外食はしたくなかったので、刑務所から直行しました。ナンシー叔母さんの手料理が食べたくてしかたなかったんです」。叔母は自慢のスパゲティを作り、温かく迎え入れてくれた。
「しばらくは従兄弟の家を出たくありませんでした」とカルフーンは話す。コロナ禍や、GPSを足首に着けて過ごした20ヵ月の仮釈放期間がそのような思いを抱かせた。
今でも外出にあまり気が進まないのには、こうした理由もある。「バスの乗り方がわからないんです。みな仕事があり忙しく、誰も教えてくれません」
外出の機会は少ないものの、ソーシャルワーカーの元へは通い続けている。刑務所の外の世界に適応できるよう、さまざまな形でカルフーンを支えてくれるそうだ。
振り返ると、生まれ育った土地(ダラス南部)から大きな影響を受けていたのではないかという思いもある。「この地域の多くの人々は、大変な苦労をしながら暮らしています。家がなかったり、薬物依存症に陥っていたり……これを『人生』と呼んでよいのでしょうか」
刑務所での生活は「自分を失うか、自分を見つけるか」のどちらかだとカルフーンは言う。彼にとっては後者だった。服役中に文字の読み書きを学び、ヘアカットの技術を身につけたカルフーンは理髪師の職を得ることを目指している。
刑務所では「与えられた命をまっとうする」という教訓も得た。「どんな人間になりたいか、毎日自分に問いかけているんです」
『STREETZine』
1冊の値段/1ドル(そのうち75セントが販売者の収入に)
発行頻度/毎月
販売場所/テキサス州ダラス
Text:Poppy Sundeen, STREETZine/INSP
Photo: Poppy Sundeen
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
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スペシャルインタビュー:美弥るりか
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